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〜同友会しんぶん「北海道版」〜
2013.10.15号掲載
文責:太田 寛二
 若い事務局員の取材を受け、ハサミについて少し話をしましたが、職人にとっての道具は体にの一部になるくらいに使い込む必要がありますが、道具は手段であって目的ではありません。
但し、技量が上がるほどに上質な道具が欲しくなります。「弘法筆を選ばず」はウソ(間違い)です。
 テーラーにっとって一番良く使うのはアイロンです。ウ−ルは水分と加熱によって立体的に加工することが可能な素材なのです。これを可塑性といいます。
 私が東京に出て弟子入りする直前まで「炭アイロン」を使っていたことを先輩の職人さんからきかされていたが、私は使ったことはありません。昭和36年頃の職業用電気アイロンにはサーモスタットが付いていなかったのでアイロンの底の温度は指先を濡らして底面に直接触れて温度を確かめるしかありませんでした。参考までに「チッツ」という音は300℃以上で生地が焦げてしまします。次に「ジュッツ」これは温度の巾があって150℃以上200℃未満でアイロン処理に向いているが、同じウールの生地であっても夏物と冬物では最適な温度は違うので150℃〜200℃の範囲内での選択は経験に寄らざるを得ない。温度を高く設定したアイロンは生地を熱処理する場合あまり時間を掛けずに加工出来るが、元に戻ってしまうので最適な温度を設定して時間を十分に掛けて(これを職人は”生地を殺す”と言っている)行う必要がある重要な工程、洋服を立体的に加工出来るのはこの行程にすべてがかかっていると言って良いでしょう。仕上がりの良い仕事を「鏝(こて)が効いてる仕事」と言ってます。
 最近は細い番手の糸を使って織られた生地が多いのでアイロンの操作は更に難しくなってます。
同友新聞北海道版2013年10月15日号
仕上がった仮縫い

一般的には仮縫いのとき、「完成芯(本縫いで使うもので既製品)」を使用するが、私は
毛芯一枚のみで行っている。これは製図・裁断でのミスが直ぐに分かるようにするためです。